近年、若い方を中心に急増している疾患です。中高年になっても発症することはあり、当院では非常に多くの患者さんの診療を行っています。2010年9月現在で潰瘍性大腸炎は約700名、クローン病は約200名の診療実績があります。
院長中心に毎日外来診療を受け付けておりますが、患者さんの数が多くお待たせしておりますため本年度から院長と共に勉強した東京大学大腸肛門外科のOBが検査、治療を一部担当します。
| 第2、4 | 土曜日 | 篠崎 大 医師(東京大学医科学研究所外科准教授) |
| 第3 | 土曜日 | 纐纈 真一郎 医師(独協医科大学越谷病院大腸外科講師) |
| 第4 | 土曜日 | 小西 毅 医師(癌研有明病院大腸外科スタッフ) |
なお、他院からの紹介やセカンドオピニオン的診療希望の方は比較的時間がとれる火曜日の夕方の予約をお勧めします。
病気の概説は下記サイトをご覧ください。
当院での診療の特徴を以下に述べます。外来では十分御説明できないため興味のある方はご覧ください。
潰瘍性大腸炎とクローン病は再燃と寛解を繰り返す慢性的な疾患と考えられており、長期的視野に立って診療を組み立てていく必要があります。たとえば、学業や仕事をしながら治療を受けていく必要があり、この点において当院が夕方診療や土曜日診療を行っていることがお役に立つと思います。また、女性では妊娠出産授乳時の管理が重要になってくるため産科専門医との連携が必要ですのでかかりつけ主治医として責任を持って対応しています。クローン病の女性患者さんから生まれたお子さんは15名になり皆さん元気で時に病院に連れてきていただけます。
長期的視野といえば、この両疾患とも長期経過で発ガンすることが知られており定期的検査が勧められます。潰瘍性大腸炎発症から35年経過して典型的な潰瘍性大腸炎合併癌を発症しましたが早期発見し手術した方は85歳をすぎてお元気です。もともと現理事長(父)が見ていた方を院長が引き続いて診せていただいており、日本のかかりつけ医(家庭)の伝統です。
一方、この2疾患については近年新薬、新治療が続々と登場し内科的治療の進歩が著しいものがあります。クローン病に対するInfliximab(レミケード)は多くの患者さんに寛解のみならず粘膜治癒をもたらすまでになり、日本で開発された血球成分除去療法は潰瘍性大腸炎のみならず大腸病変を有するクローン病にも有効性が確認されました。しかし残念ながらすべての患者さんが寛解し長期間維持できるとは限りませんのでさらに新しい薬(治験薬)の開発も患者さんとともにお手伝いしています「(3)参照」
多くの大学病院、公的病院では内科の先生が日頃は診療しその診療では限界になったとき外科の先生にバトンタッチする体制となっていますが、当院では外科出身の院長が中心となり肛門科を特に専門とする医師、腹腔鏡手術を専門とする医師、ストーマ外来担当の医師、ETナースなどの専門職のみならず職員すべてがこの疾患の理解を深めてチーム医療を目指しています。患者さんのご協力とスタッフの努力でこれまでに急性期(炎症の強い劇症、重症の状態)での死亡例はありません。長期に罹患すると残念ながら大腸癌(クローン病では小腸癌や肛門癌も)の危険性が出てきますので患者さん方はサーベイランスというがんの早期発見プログラムを受けることが勧められます。
日本では欧米で使用されている薬の導入が遅れているドラッグラグの問題が指摘されていますが、この分野でもほとんどの薬は遅れて欧米から導入されてきます。これは欧米では患者さんの数が圧倒的に多く、薬を開発する製薬会社は日本の研究費とは比べ物にならない投資を行っているからです。院長が英国セントマークス病院留学中にInfliximab(レミケード)の初めての治験を行っているのをかいまみましたが、これまでにないすごい薬だと言っていたのを思い出します。それから日本で使用されるまで6年かかりました。当院では患者さんを多くみせていただいている責任もあり患者さんとともに良い医療を作っていくため多くの治験を行ってきました。
潰瘍性大腸炎では5-ASA製剤(ペンタサ、アサコール、サラゾピリンなど)が基本薬であることは変わりませんが、海外では一日一回の服用でよい製剤が続々と登場して治療成績も副作用も変わりがないことがわかってきました。一方、クローン病では病気を起こしている特定の分子標的をめがけて治療する「ターゲット治療」がレミケードの成功以来続々と試みられています。
初代院長の横山一格(院長曽祖父)の時代には食中毒が胃腸科医の主に扱う疾患であり、2代院長の横山秀吉(院長祖父)の時代には胃潰瘍、十二指腸潰瘍が現在の炎症性腸疾患のように若い人の罹患する危険な病気で穿孔や出血が制御できず3代院長(現理事長、院長父)が手術にあけくれる時代でした。当時の当院は一日に一人で胃切除を5件も行うような時代であり、この中から早期胃がんが見つかってきました。現理事長の時代にはH2-Blockerが開発され胃十二指腸潰瘍は内科的にコントロールしうる病気となりさらにヘリコバクターピロリの発見とその除菌療法によりかつて手術に至っていた胃十二指腸潰瘍は今や最も扱いやすい疾患となったと言えるでしょう。一方、この時代には高齢化とともにがんが多くなりこの手術や化学療法に明け暮れていたようです。このように当院の100年を超える歴史を振り返ってみますと胃腸疾患が大きく変遷してきたことがわかり、炎症性腸疾患もいつかは根本的解決するのではないかと期待されます。民間の一病院である当院では、根治療法の開発は困難ですがいつか完全に解決されるまで患者さんのQOLを保ちともに歩んでいくことを目標にしています。