ソケイヘルニアってどんな病気？

ソケイヘルニアとはソケイ部（足の付け根の部分）の筋肉の隙間から、お腹の中をおおっている腹膜という膜が、風船のように皮膚の下に飛び出す病気のことです。その飛び出した袋（ヘルニア嚢）の中に小腸などの一部が脱出してしまい（別名、脱腸といわれるゆえんです）、ソケイ部が膨らんでしまいます。乳幼児の場合はそのほとんどが先天的なものですが、成人の場合は加齢により筋肉が弱くなることが原因で、特に40代以上の男性に多く起こる傾向があります。腹圧のかかる製造業や立ち仕事に従事する人に多く見られます。ソケイヘルニア自体は良性疾患ですが、放っておくと、痛みが出たり、嵌頓といって、小腸などが大量に袋の中に脱出したまま戻らなくなり、時間が経つと腸が腐ってしまうようなことも起こる可能性があります。嵌頓してしまうと、場合によっては緊急手術が必要になります。

腹腔鏡下ソケイヘルニア手術ってどんな手術？

おへそ（中もしくは下）と左右の側腹部に合計3ヶ所、1～1.5cm程度の切開を加えます。この傷から内視鏡やマジックハンド状の手術器具を挿入し、お腹の中をテレビモニターに映しながら手術を行います。手術中にはお腹の中に二酸化炭素を送り込み、手術操作に必要な空間を作ります。腹膜の穴（筋肉の穴）の部分の腹膜を切開し、腹膜をはがし、その裏にポリプロピレンでできたメッシュのシートを置きます。ずれないように、チタン製のクリップ（ホチキス）で止めた後、切開した腹膜を糸で縫い合わせます。順調に経過すれば、術後3－４日目位で退院となります。

腹腔鏡下ソケイヘルニア根治術で使用しているメッシュ。図のような体の形状にフィットする立体型のメッシュを使用します。

腹膜を切開しヘルニアが出る場所を完全におおうようにメッシュを置きます。

2009年8月からは、腹腔鏡下ソケイヘルニア根治術の発展した手術法として、単孔式腹腔鏡手術を行うようになってきています。

単孔式腹腔鏡下ソケイヘルニア根治術とは？

傷がどこにあるかほとんどわかりません。臍を使用しています。

おへその中を縦に切開もしくは、おへその下を半円形に切開し、この1カ所から手術器具を挿入して、腹腔鏡下ソケイヘルニア根治術を行うものです。多少のおへそが変形しますが、時間がたてば、創が目立たなくなるという利点があります。欠点としては、手術時間が通常の腹腔鏡下ソケイヘルニア根治術の1.5～2倍程度かかる点が挙げられます。原則として、若年者の片側のソケイヘルニアを対象とさせていただいています。

腹腔鏡下ソケイヘルニア手術って何がいいの？

腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術の利点は、

1. 傷が小さい（術後の痛みが少ない）
2. 内側から見るため、ヘルニアの見落としがない
3. 反対側の鼠径ヘルニアの有無を確認でき、あれば両側とも1回の手術で閉鎖することができる
4. 精管や精巣血管、神経の損傷の危険が少ないことが挙げられます。

腹腔鏡下ソケイヘルニア手術って誰でも受けられるの？

お腹の中に入って手術を行うため、腹部手術の経験がある方はできないことがあります。また、全身麻酔が必要となるため、合併症などにより、全身麻酔をかけるのが困難な方は対象になりません。このような方は、従来の方法にて手術を行います。